夢の扉+で紹介
音を防ぐには発生源の壁やドアを厚くする
それが防音の掟だった
ところがわずか3㎝という薄さの夢の防音材が誕生した
けたたましい目覚まし時計をハニカム防音材その防音材で囲った箱に入れてみると音が聞こえなくなる
優れた防音性に加え、これまでの常識を覆す薄さと軽さ
●ハニカム防音材 開発者:武紘一
・株式会社 静科:神奈川県大和市深見西4-6-24
TEL:046-260-2789
静かさを科学すると云う意味で扱うのは防音材のみ
従業員わずか5人の責任者が武紘一
長年、化学メーカーに勤めていた武は、バブル崩壊後
出向していた子会社が倒産し、行き場を失った
54歳でリストラ
武は仕事を求め、町工場を転々とした
そんなある日出会ったのが、武の2つ年上だった機械工の高橋邦雄
武はその日から仕事を得るとヒントを求め図書館に通い詰めた
ある日手にした一冊の本「サンドイッチ構造の基礎」
“薄くて軽い防音性に優れた構造は我々技術者の永遠の夢である”と書かれてあった
いても経ってもいられなくなった武は著者の東京医科歯科大学:宮入裕夫を訪ねた
目指すは薄くて軽い防音材
●ハチの巣で驚異の防音材
ヒントをくれたのはハチの巣
ハチの巣の六角形から生まれたハニカム構造は武が以前、仕事で扱っていた建材
薄いのにもかかわらず強度の高い構造材として知られ、新幹線の床などに使われている
ハニカム構造のもう一つの特徴は水に浮くほど軽い事
ハニカム構造に防音性を持たせることが出来れば目指す薄くて軽い防音材に近付けるのではないか
武と高橋の試行錯誤が始まった
●防音のメカニズム
防音とは振動を遮断し外に漏らさないこと
その代表的な方法が遮音と吸音
遮音とは壁に音の振動を伝えないこと
吸音は音の振動を壁の中の空気の層に吸収させて小さくしてしまうこと
そのため、吸音にはウレタンやグラスウールなど空気の層が多いフワフワした素材が使われるのが一般的
丈夫なハニカム構造に吸音性に優れた素材を詰めれば、薄くて軽い防音材に近付くはず
ところが六角形に隙間なく均等に押し込むことが出来る素材がなかなかない
2人は試行錯誤を繰り返した
ある時、武は閃いた
フラワーアレンジメントのスポンジ
生花の茎をどこにでも簡単に挿し込むことが出来るうえ、しっかりと固定する
武と高橋は花屋からもらってきたスポンジをハニカム構造にゆっくりと押し込んだ
今まで試したどの素材よりもすんなりと入った
武はすぐに花用スポンジの輸入と販売を手掛けている会社に直談判した
「おたくのスポンジを防音に使いたい」
脆いスポンジは一度、隙間なく均等に押し込まれれば六角形によってガードされ崩れる心配もない
それをアルミ板で挟み、さらに高い防音性を目指した
ハニカム構造と生花用スポンジと云う防音とは無縁の物を組み合わせた前代未聞の防音材が生まれた
吸音材としてもっともポピュラーなウレタンを内側に貼った箱で音をシャットアウトしてみる
かぶせる前:79.8dB→かぶせた後:54.7dB
同じ条件でハニカム防音材の箱をかぶせる
かぶせる前:79.8dB→かぶせた後:44.2dB
ウレタンよりもさらに10dBも下がった
防音材にぶつかった音は表面のアルミ板の無数の穴でまず吸音され、中のスポンジでさらに小さくなる
突き当たった板で遮音され反射した音はさらに小さく吸音される
いわば遮音と吸音を組み合わせた最強の防音材が完成した
住宅用の薄型防音パネルを開発
その頃、パートナーの高橋が病に倒れた
昔うけた心臓手術の影響で入退院を繰り返すように
“音に困っている仮設住宅の人たちに一刻も早く静けさを…”
高橋が命を懸けて製品は2012年1月被災地へ送られた
それを見届けたかのように高橋は静かに息を引き取った
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