夢の扉+で紹介
●田んぼを除染する人工ゼオライト
最も除染が困難とされる田んぼ
普段行われている除染は汚染された土を下の土と入れ替えたり、表面の土を削り取ってしまう方法
しかし実は表面の土こそ田んぼの命
豊富な養分や微生物が除染により失われ、土が痩せてしまう
そんな中、肥沃な土壌から放射性物質だけをピンポイントに取り除く技術が誕生
生み出したのは愛媛大学 農学部教授:逸見彰男
福島県飯館村の放射性セシウムの量は一般的な農地の1600倍
現在、除染現場で放射性セシウムの吸着に使われているのがゼオライト
火山灰が固まって生成された鉱物
匂いも吸着する性質を活かし猫用トイレに使われている
ゼオライトは主に3種類
山で採れる天然ゼオライト、高純度の材料で比較的高価な合成ゼオライト、
そして廃棄物を再利用して低コストで作れる人工ゼオライト
この人工ゼオライトの生みの親が逸見教授
人工ゼオライトは他のゼオライトよりもセシウムを強く吸着する特製を持っている
人工ゼオライトの表面にある小さな穴で吸着する
ゼオライトはマイナスの電気を帯びており、プラスの物質を強く引き付ける
その原理で放射性セシウムを吸着
現在、主に汚染水の除染で発揮されている
水の中以上に問題なのが田んぼの除染
田んぼにゼオライトを撒くと土の中の放射性セシウムを吸着
ところがそのゼオライトを回収するには表面の土を削り取るしかない
しかしその行為は作物を育てるために必要な養分や微生物までを取り除いてしまう事になる
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●土の中のゼオライトだけを回収する
今からおよそ40年前、逸見教授が研究したのは火山灰が降り積もった土だった
火山灰土壌では農作物が育ちにくいのか?
当時その原因は解明されておらず、研究者の誰もがさじを投げていた
逸見教授は仮説を立てた…
火山灰土壌には作物に必要な養分を吸着してしまうメカニズムがあるのでは?
逸見教授は10年かけて自らの仮説を証明
火山灰が植物に必要なリンを強く吸着することを突き止めた
この灰の吸着力を逆に土づくりに利用できないか?
そう考えた逸見教授が目を付けたのは日本中にある火力発電所からでる石炭を燃やした灰
10年かけて灰の吸着力を調整し、農作物に適度に養分を与える土壌改良材:人工ゼオライトに仕立て上げた
原発事故後、放射性セシウムの吸着力から逸見教授の人工ゼオライトはさらに注目を集める
土の中のゼオライトだけを回収する…
壁にぶつかった逸見教授に救世主が現れた
愛媛大学で磁力の研究をしていた青野宏通准教授
セシウムを吸着するゼオライトに磁性体を混ぜる事が出来れば田んぼからゼオライトだけを回収する事が出来る
人工ゼオライトと磁石にくっつく物質を単に混ぜ合わせるだけでは分離してしまう
青野准教授はこの問題をクリアするため、用いる知識と経験を全て研究に注いだ
やがて青野准教授は2つの原料の配分や合成するタイミング次第で目指す磁力を持った人工ゼオライトになる事を突き止める
愛媛で試作した物を福島に持ち込み、実証実験を繰り返した
●2012年7月、世界初の磁化ゼオライトが誕生
福島県川俣町の田んぼの実証実験
事前に調査した田んぼの汚染レベルは1700Bq/kg
土の中の放射性セシウムをまるで磁石が砂鉄を吸い寄せるように取り除く世界初の技術
汚染された土を水と一緒に吸い上げ、そこに人工ゼオライトを加える
それらが磁石のローラーに移動するとセシウムを吸着した人工ゼオライトだけが磁石に吸い寄せられる
こうして除染された土は元の田んぼに戻すので土が痩せる心配もない
結果、最大1700Bq/kgあった放射線量は121Bq/kgまで下がり、除染率は93%
この数値なら米は食品基準値を十分クリアできる
企業の協力も進んでいる
特殊な紙のメーカーが逸見教授と開発したのは人工ゼオライトのシート
田植えと同時に敷くことで除染の効率アップが期待されている
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