夢の扉＋で紹介
20世紀初頭、4000万人の命を奪ったとも言われているスペイン風邪
当時、謎だったこの感染症をインフルエンザだと解明した日本人がいる
ウイルス学者：根路銘国昭
沖縄県名護市にある生物資源研究所は根路銘の研究所
厳重に鍵がかけられた部屋の奥には…
最新のインフルエンザから4000万人が犠牲になったスペイン風邪まで30種類以上のウイルスや細胞が冷凍保存されている
根路銘の腕を見込んで世界中からウイルスの解析依頼が舞い込んでくる
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●鶏の体に潜む新型インフルエンザウイルス：H5N1
スペイン風邪を凌ぐほどの毒性…感染すれば約60%が死に至る
強い毒性のウイルスに対抗できるのがワクチン
新型のウイルスが流行した場合、そのワクチンを作るには約6か月かかると言われている
これでは恐ろしいスピードで変異を繰り返すウイルスに対抗するには万全ではない
いかに早く効果のあるワクチンを作れるか？それが世界中のウイルス学者が超えようとしてる壁
ワクチン製造に使われるのは鶏の有精卵
その卵にウイルスを注射し、培養する
次に増やしたウイルスを集め、有害部分を取り除くことでワクチンが完成する
しかし、鶏卵1個につき数人分のワクチンしかできない
●新しいワクチンの製造方法
鶏の体に潜む新型インフルエンザウイルス：H5N1はインドネシアで頻繁に発生
それが人間に感染し、160人もの死者が出ていた
ワクチンを安く大量に製造できるように根路銘は鶏の卵に代わるものとして蚕を選んだ
蚕の産む卵は1匹でおよそ300個
しかも省スペースでたくさん育てる事も出来る
鶏卵1個につき数人分のワクチンしか作れないのに対し、蚕なら1匹で数百人分を作る事も可能
●毒性の強いウイルスの扱い
根路銘「生のウイルスを扱わなくても情報さえあればいくらでもワクチンは作れる」
情報とは毒性の強いインフルエンザの遺伝子情報
遺伝子情報を使ってワクチンを開発する画期的な試み
これまでは本物の新型ウイルスを注入し、ウイルス自体を培養することでワクチンを作るため多くの危険を伴った
それに対し、根路銘が行ったのはウイルスの遺伝子情報を操作する事
人間に危害を与える部分は取り除き、有効な部分は残す
これを元に安全なインフルエンザウイルスを作りだし、ワクチン開発に役立てようと考えた
この遺伝子技術を使えばウイルスがこの先、どんな変異をするのか予測できる可能性がある
まず蚕の卵に遺伝子を組み換えた安全なウイルスを注入
すると生まれてくる蚕の体内にはワクチンを作るための遺伝子がすでに備わっている
あとは蚕を選別し大切に育てるだけ
さらにその蚕が300個の卵を産む
そこから産まれる幼虫にもワクチンを作る機能が受け継がれている
さらにこれらの蚕が吐き出す糸の中にインフルエンザに有効なワクチン成分が含まれている
繭玉ワクチンは水に溶かすだけで副作用の原因である不純物がほとんどないワクチン成分を採り出す事が出来る
たった一つの繭から作れるワクチンは、数百人分
この繭玉ワクチンが実用化すれば通常6か月かかるワクチン製造が2か月に短縮できる
1963年、北海道大学へ
1966年、現・国立感染症研究所へ入所
1993年、パリで行われたウイルス学の国際会議
当時、アメリカが開発したばかりの生ワクチンについてこんな提案が出された
「ワクチン政策が遅れている日本に生ワクチンを導入すべきだ」
開発されたばかりの生ワクチンは副作用の恐れがあり、アメリカ本土では認可されていなかった
居並ぶ日本の学者たちが押し黙る中、たった一人根路銘は立ち上がった
「日本人は君たちアメリカ人に教えられるほど文化が遅れているわけではなく、むしろアメリカと同等の科学の成果と文化を持っている。だから君たちに教わるつもりは毛頭ない」
日本への生ワクチン導入を食い止めた
根路銘「やる時は1対00でも喧嘩をしなくてはいけない」
1993年、スイスで行われたWHO（世界保健機関）総会では世界のウイルス学者が集い、その年のインフルエンザワクチンを決める会議が行われた
日本代表として出席した根路銘は効果に自信のあった日本製ワクチンを採用すべきと主張した
ところが出席者たちの評決はアメリカ製ワクチンに10票、日本製ワクチンに1票
圧倒的多数でアメリカ製ワクチンに決まってしまう
根路銘は休憩時間に日本とアメリカのワクチンのデータを洗い直した
結果は日本製がアメリカ製の4倍近く効果が期待できると云うモノだった
根路銘は居並ぶ各国の代表に問いかけた
「まず最初に確認させた欲しい、あなたは政治家ですか？それとも科学者ですか？科学者ならこのデータをどう思うのだ？」
静寂を打ち破り議長が「先ほどの評決を取り消します。今年はドクター根路銘が提案した日本のワクチンに決定します」
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