夢の扉+で紹介
世界中で甚大な被害をもたらせている土砂災害
山の多い日本では大雨や地震の度にその危険が迫る
2011年だけでも1422件もの土砂崩れや地滑りなどが報告されている
土砂崩れの対策として一般的なのが斜面全体をコンクリートで覆ってしまうやり方
そんな中、常識を覆す方法が長崎で生まれた
●木を1本も切らない斜面補強「ノンフレーム工法」
その秘密は斜面に点在する突起物
コンクリートの補強に引けをとらない
開発者は日鐵住金建材の岩佐直人
開発の原点は岩佐が故郷で目にした里山の風景
子供の頃から慣れ親しんだ山が灰色に覆われていた
スポンサーリンク
ノンフレーム工法とは細長い杭を地面に打ち込む最新の斜面補強技術
例えば2つに切った豆腐は地面の中の2つの地層を表している
爪楊枝を垂直に打ち込んだ豆腐と打ち込まない豆腐
傾けても爪楊枝を打ち込んだ豆腐は滑り落ちない
ノンフレーム工法の突起の下にも杭が深い地層まで貫かれていることで斜面を補強している
この工法が画期的なのは施工にあたり木を1本も切らなくても良いこと
長崎は平地が少なく山の斜面に民家が張り付くように建っている場所も多い
全国的に見ても土砂災害の多い土地
1982年7月、長崎県を集中豪雨が襲った
死者299人、被害総額:約3000億円にのぼる大災害
長崎県庁の農林部:市村正彦が岩佐直人に出した宿題
「新しい斜面補強の工法を考えてほしい…」
市村の漠然としたイメージを岩佐がスケッチしたのが斜面をクモの巣状に覆うと云うもの
新米の岩佐には理解の及ばない難しい宿題だった
その後、岩佐は1987年から2年間、会社に籍を置きながら、最先端の技術を学ぶためつくば土木研究所に入所
特に没頭したのはロックボルトと云う斜面に埋め込む補強坊の研究
いくつもの現場でコンクリートのフレームにロックボルトを打ち込み成果をあげた
斜面補強のスペシャリストに成長した岩佐
1995年、長崎県の斜面補強の工事の現場で市村と10年ぶりの再会を果たした
その現場は住宅地に隣接した山の斜面
これまで何度も土砂崩れが起きている危険な場所だった
最大傾斜80度の斜面を目の当たりにした岩佐は考えた
ここは木を切って斜面を削り、ロックボルトを使った最新の技術で補強するしかない
ところが市村は思わぬことを口にした
「ここの補強、木を伐らないでやってほしい」
従来の工法で木を切り、斜面を削った場合、生活空間に影響が及んでしまうと云う一部の住民の声があった
困り果てた岩佐
何度の現場に足を運んでは解決策を模索した
そんな時、市村がつぶやいた
「樹木を生かせばいいじゃないの?」
当時の技術では到底不可能に思えた
岩佐が訪ねたのは、木の根がもつ力を研究している専門家:阿部和時だった
「樹木の根は斜面を安定させる力を持っている」
阿部の言う安定とは木の根が横に広がって生まれる力によるもの
それは深い地層には及ばない
崩れようとする土層と、その下の土層を根が繋ぎ止める力はない
岩佐は考えた、斜面を安定させる根っこの力を残したまま、それが及ばない深い地層へは人工の根となるロックボルトを打ち込み、その頭を支圧板という鉄板で締め付ける
そして支圧板同士をワイヤーで連結させていく
発想は市村に出された宿題のスケッチにあったクモの巣工法
1/20のスケールで再現した地層の実験装置
ロックボルト打ち込んでいない地層は傾斜25度で滑り落ち、地表には大きな亀裂が
一方、ロックボルトを打ち込んだ地表は何の変化も見られない
最大の傾斜45度でもロックボルトは滑り落ちない
地表を確認すると支圧板が土にめり込んでいる
実はロックボルトを打ち込んだ地層もわずかに滑り落ちていた
ところが地中のロックボルトが曲がったことで支圧板に地面をより捕まえる力が生じていた
さらにクモの巣状に張ったワイヤーが支圧板が地中にめり込む力を分散
ロックボルト、支圧板、ワイヤー、3つの相乗効果が岩佐が思っていた以上にはっきりと確認できた
そして1995年、あの傾斜80度近い斜面に初めて施工する日を迎えた
木を1本も切らずに補強すると云う画期的な工法が完成
岩佐はこれを「ノンフレーム工法」と名付けた
スポンサーリンク
11月29日に放映されたTV番組(カンブリア宮殿)で見ました。本当に素晴らしい技術です。
日本は四季折々大変素晴らしい国ですが、一方山が急峻で、地震も多く、雨が多いので、長崎県を問わず全国で土砂崩れの危険は高いです。危険な箇所が日本には30万箇所もあり、今回の方法で対処施行されているのはまだ1000箇所と昨日放送されていました。
国土を守る事と国家の財政の均衡を保つ事、難しい問題ですが、このような画期的な防災技術が日本から開発された事に敬意を表します。
以上
投稿情報: LM谷やん | 2012/11/30 07:38