ザ・ベストハウス123で紹介
恐怖のウイルスと命をかけて闘った医師
2003年3月3日、ベトナム・ハノイのWHO事務所にハノイの総合病院から連絡があった
「薬が効かない患者がいるすぐに来てくれ」
●カルロ・ウルバニ医師
2年半前感染症の専門医としてベトナムのWHOに赴任したイタリア人医師
母国イタリアでは感染症の研究を行ってきた
東南アジアで感染症撲滅を志し、ベトナム行きを志願した熱血漢
事務所での仕事に飽き足らず、病院に行けない貧しい人々の為に街角で無料診察を行った
ウルバニはその足で病院の患者の元に直行した
患者は激しく咳き込んでいた
40度近い高熱が続き下がる気配もないと云う
患者の肺は左右共に白い影に覆われていた
患者は中国系アメリカ人で香港から来ていた
スポンサーリンク
3週間ほど前、中国のWHOから広東省で原因不明の肺炎が流行していると連絡があった
広東省と香港は隣り合わせの場所
中国南部はヒトと野生動物が密接して生活している
動物に棲みつくウイルスが人間にも感染する新型に変異する事例が起きていた
そのひとつが国境を越え広がり始めたのではないか?と考え、男性の症状をまとめ、WHO本部に報告
「患者の容体は最悪だ、新型ウイルスの可能性が高い」
謎のウイルスの正体をつかもうと患者のあらゆる体液を採取
ベトナム国立感染研究所にも分析を依頼した
2日後、患者を診ていたナース7人が発症
ウルバニは毎日病院に通い、感染したナースの症状を記録
病院で集めたデータをWHO関係者に報告
その特徴は?
・咳やくしゃみなどによってうつる飛沫感染である
・潜伏期間は3日から5日
・一旦発症するとじゅうどの肺炎になり高熱が下がらない
感染者が8人となった2日後、感染者は20人となった
その全てが病院スタッフ
ウルバニに説得され、病院は閉鎖を決断
謎のウイルスはものすごいスピードで世界に拡大
WHOのいち職員にすぎない彼がベトナム政府に緊急会議を要請
会議は保険省で開かれた
副大臣以下、居並ぶ官僚
「新型ウイルスが広がっている、今すぐ国を閉じてください」
ウルバニの熱意で副大臣は新型ウイルス対策を約束した
ベトナム政府はすぐに空港や港で検疫を行い、国外への移動を制限した
ウルバニ自身もは謎のウイルスに感染
「ジュリアーナ私だ、子供達は元気か?(元気よ、あなたは?)少し熱がある、しばらく帰れそうにない…。」
妻は夫の言葉に全てを悟った
「子供達をよろしく頼む。君の声が聞けて良かった。また会おう」
2003年3月12日、WHOはウルバニの訴えを受け、創設以来初めてのアクションを起こした
グローバルアラート:世界中で大流行の可能性がある危険度の高い感染病に対して出される最も強いWHOの警告
ウルバニは自ら発症し世界に新型ウイルスの危険を知らせた
これにより恐怖のウイルスの存在が世界に知れ渡った
その対処法もすばやく広がった
各国の保健機関を通じ伝達されたその方法は、ウルバニがベトナムで命がけで確認した情報を元に確立されたものだった
●謎のウイルスは重症急性呼吸器症候群SARSと名付けられた
グローバルアラートから17日後、カルロ・ウルバニは静かに息をひきとった
享年46歳
ウルバニの行動は世界中で絶賛された
SARSは世界で8000人近く感染者を出し、死者は700人以上に上った
2004年5月、WHOはSARSの終息宣言を発表
スポンサーリンク
コメント