夢の扉+で紹介
日本人の脚はO脚の傾向
年齢と共に外側に曲り、ひどくなると膝の関節がすり減る
重症の場合、変形した膝関節そのものを取り出し、人口の関節に置き換える手術を行う
・ナカシマメディカル:藏本孝一
日本人に合った人工関節を作る男
まるで工芸品のように光り輝く関節
磨き上げるのは船のプロペラを作る熟練の技
プロペラ屋が挑む究極の人工関節
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身体をスムーズに動かすうえで欠かせないもの関節
人工関節は主に金属とポリエチレンで作られ、手術によって埋め込まれる
その関節自体には動力はなく周りの筋肉によって動かされる
関節の悩みと云えばO脚が原因とされる膝関節症
痛みに苦しむ患者は全国でおよそ820万人
軟骨がすり減り、骨同士がぶつかる患部を人工関節に置き換えることで患者は傷みから解放される
極限まで磨かれたのは膝の関節
ナカシマメディカルの母体は船舶のプロペラを作るナカシマプロペラ
ある日、医者が工場見学に訪れ、あまりに滑らかなプロペラの曲面を見て、
「この研磨技術があれば人工関節が作れるはず」
医療分野に関しては全くの素人:藏本に業務命令が下った
人工関節を調べるうちに驚くべき事実を知った
年と国内で使われている9割が欧米製
藏本は思った…その人工関節は日本人に合っているのだろうか?
まず想像したのは生活習慣の違い
基本的に欧米人は椅子の生活、膝の関節は100度も曲がれば不自由はない
一方、日本人は正座をする機会が多い、135度以上は曲げる必要性がでてくる
藏本は日本人に合う人工関節を作ろうと高い目標を掲げて突き進む
正座を苦ともしない深く曲げられる人工関節の開発
そこでかつてないデザインが求められた
当時、藏本が知る人工関節はつなぐ骨に対して平面上に作られていたため、膝を曲げられる角度が限られてしまう
そこで藏本はパーツの一部分に丸みをもたせると云うデザインを生み出した
この丸い部分が関節の可動範囲を広げ、より深く曲げる事を可能にする
身体がスムーズに動くのは関節の摩擦が限りなく小さいため
なんと氷の上をすべるより遥かに小さいと云う
自分たちは世界一のプロペラメーカーだ、磨きに関してはどこにも負けない
藏本の頭に真っ先に浮かんだのが研磨一筋25年の渡辺晴美だった
人工関節を鏡のように磨き上げてくれ
およそ20種類のグラインダーから最適なものを瞬時に選び出す
さらに回転数を微妙に変えながら磨きをかける
研磨職人として長年の勘だけが頼りだった
作業を続けた渡辺は3年後、全く歪みない磨きへと辿り着いた
それは工芸品のように美しく、光り輝いていた
磨き上げた部品の滑らかさを測定
光を当てその反射の乱れからナノ単位の凹凸を測る
結果は8.68nm
比較の為、電球とスプーンの表面の粗さを測定すると
スプーン:490nm、電球:150nmと圧倒的に凹凸の無い滑らかさであることが分かった
それは滑らかに動き、目指していた135度と云う深い角度まで曲がった
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軟骨は硬いが弾力がある
主に骨の先端についている
クッションがあり摩擦が少ないのも特徴
残念ながら再生機能がないため、一度すり減ると元には戻らない
材質であるポリエスチレンは体の中で参加が進むと脆くなってしまう
そのため、人口関節の寿命は約20年とされ関節の入れ替えが必要となった場合
当然患者は再び手術をするほかない
京都大学 工学研究所 高額・医学博士:富田直秀教授
人工器官の開発を行っている彼が注目したのはビタミンE
ビタミンEは脂溶性の油のような物質
ポリエチレンは粉の物を固めてつくる
粉の物を固めて作る時に油のような物質があった方が粉も固まりやすい
しかも酸化防止の効果もあるビタミンE
このビタミンEで軟骨の劣化を少なくしたい
人工関節の寿命を延ばすビタミンE
藏本と富田は研究を重ね、ついに理想的な加工方法を突き止めた
すると藏本はすぐに耐久テスト用の装置を購入
500万回もの膝の動きを再現し、その摩耗具合を検証
摩耗の結果は一目瞭然
従来品に対してビタミンE入りはおよそ30%摩耗が少ない事が実証された
いま藏本はまたも高い目標を掲げている
研究所に手術室そっくりの部屋を作り、手術支援ロボットの実用化を進めている
患者の間接の形をコンピュータに入力
人工関節を装着させるため、ロボットアームが寸分の狂いなく削っていく
手術の様子をリアルタイムで確認できる国内初のシステム